「え、ビートルってもう売ってないの!?」
そんなふうに驚いた人、案外多いのではないでしょうか。
まるっこいフォルムに、つぶらなヘッドライト。
どこか虫みたいで、まるで“生き物みたいなかわいさ”をまとったあの車。
フォルクスワーゲン・ビートルは、まさに“世界一有名なレトロポップカー”だったはず。
それなのに──2019年、生産終了。
しかも「さよなら」もあっさりとしていて、
気づけば静かにラインナップから消えていました。
「どうして?」
「まだあんなに人気があったのに…?」
「もしかして、また復活したりしないの?」
そんなふうに、“終わった車”に対して、こんなにも惜しまれる気持ちが向けられる。
それがビートルという存在の、特別さなのかもしれません。
今回はそんな“ビートル・ロス”な気持ちを出発点にして、
- なぜビートルは生産終了になったのか?
- またいつか戻ってくる可能性はあるのか?
- レトロポップ好きが今買うなら、どのビートルが正解?
という問いを、ビートルの歴史・時代の空気、探っていきます。
ビートルの歴史:生まれた背景と変遷
初代(タイプ1):フェルディナンド・ポルシェが生んだ「国民車」



ビートルの歴史は1938年に遡ります。この車を設計したのは、後にポルシェを創設するフェルディナンド・ポルシェでした。彼は当時のドイツ政府から「誰でも買える国民車(フォルクスワーゲン)」の開発を依頼され、徹底的にコストを抑えつつ、耐久性の高い車を作り上げました。
特徴的だったのは、空冷水平対向エンジンを後ろに搭載するRRレイアウト。冷却水が不要で壊れにくく、メンテナンスも簡単という利点がありました。また、流線型のボディは空気抵抗を減らすと同時に、独特の愛嬌を生み出しました。
しかし、開発直後に第二次世界大戦が勃発。ビートルの量産は一時中断され、軍用車「キューベルワーゲン」や水陸両用車「シュビムワーゲン」などの派生モデルが生産されることになります。
戦後、イギリス軍のアイヴァン・ハースト少佐が工場を管理し、ビートルの生産を再開。1955年には累計100万台を突破し、1972年には当時の量産車世界最多記録を更新しました。最終的に2003年まで生産が続き、ビートルは「壊れにくく、シンプルで実用的な車」として世界中で愛されました。
ニュービートル:レトロデザインで復活(1997年〜2010年)



初代が生産終了した後、1997年に「ニュービートル」として復活しました。クラシカルなデザインを維持しながらも、エンジンを前に搭載するFFレイアウトへ変更し、実用性を向上。特におしゃれな内装と豊富なカラーバリエーションが女性に人気を博しました。
しかし、ゴルフをベースにしていたため、車体のプロポーションに違和感を覚える人も。さらに、ラゲッジスペースが狭く、実用性の面では期待を下回る部分もありました。結果として、2010年に生産終了となりました。
ザ・ビートル:スポーティーな進化(2011年〜2019年)



2011年に登場した「ザ・ビートル」は、よりスポーティーなデザインへ進化。ルーフラインを低くし、インテリアの質感を向上させ、ターボモデルやディーゼルモデルも展開しました。
しかし、コンパクトカー市場の縮小とSUV人気の高まりに押され、販売は低迷。2019年に生産終了となり、ビートルの歴史はいったん幕を閉じました。
ビートルはなぜ販売終了したのか?
SUVの人気に押された
近年の自動車市場ではSUVが圧倒的な人気を誇っています。理由は、視点が高く運転しやすいことや、広い室内空間、積載性の高さなどが挙げられます。そうした流れの中で、デザイン重視のコンパクトカーであるビートルは市場から押し出される形になりました。
フォルクスワーゲンのEV戦略への転換
フォルクスワーゲンは「ディーゼルゲート問題」以降、EV戦略を加速させています。新ブランド「ID.シリーズ」を立ち上げ、2030年までにEV販売比率を大幅に増やす計画を進めています。この流れの中で、ビートルのような内燃機関車を継続するよりも、EV開発が優先されました。
販売不振が決定打に
ニュービートルはヒットしたものの、ザ・ビートルの販売は思ったほど伸びませんでした。特にアメリカ市場では2018年に販売台数が1.5万台まで減少し、ピーク時の約1/5に。日本市場でもゴルフやポロに比べると販売台数が少なく、「ビートルは役割を終えた」と判断されました。
ビートルは今後復活する可能性はあるのか?
気になるのは「ビートルが復活する可能性があるのか?」という点。完全に絶望的かというと、そうではありません。
1. フォルクスワーゲンが「ビートルのEV化」を示唆
実は、フォルクスワーゲンの幹部は「ビートルのEV版を作る可能性はゼロではない」と発言しています。もし復活するとしたら、従来のガソリン車ではなく、電気自動車(EV)として登場する可能性が高いです。
2. ID. Buzz(電動ワーゲンバス)の成功がカギ


フォルクスワーゲンはすでにクラシックカーをEVとして復活させています。それが『ID. Buzz』(ワーゲンバスのEV版)です。
このモデルが成功すれば、ビートルのEV版が登場する可能性も高まります。ファンの熱望次第で、フォルクスワーゲンが再びビートルを開発するかもしれません。
3. レトロブームの再来が追い風になる?
現在、車業界では「レトロデザインの再評価」が進んでいます。フィアット500やミニクーパーなど、昔ながらのデザインを活かした車が人気です。
この流れに乗って、フォルクスワーゲンも「レトロデザインのEV」としてビートルを復活させる可能性は十分あります。
レトロポップ好きが:買うならどのビートル?
前提:「レトロポップ好きで、無理なく日常の車生活を送りたい」という視点から見ていきます。
「初代ビートル!」と言いたいところですが、ヴィンテージの魅力はありますが、正直言って、根性がないと乗りこなすのは難しいかもしれません。もうこの境域は人によりますね。筆者的には、メンテナンスや古さに起因する不安定な部分も多いので、日常使いを考えると少し挑戦的すぎるかも。
じゃあ新しい、「ザ・ビートルで!」と言いたくなりますが、ザ・ビートルはややスポーティすぎて、レトロポップな雰囲気には少し違和感を覚えるかもしれません。デザイン自体はかっこよく仕上がっていますが、レトロな「可愛さ」を求めると、少しアグレッシブすぎるかもしれません。
ということで、レトロポップ好きには、「ニュービートル」がおすすめします。
丸みを帯びた可愛らしいフォルムは、まさにレトロポップの象徴。そのデザインはどこか懐かしく、心をくすぐります。特に、ビートルの特徴的なお尻の丸目が、見るたびに温かい気持ちを引き出してくれます。現代を無理なく過ごせるニュービートルは、ポップなカラーやインテリアの細部にこだわりが感じられ、レトロな魅力がきちんと現代的に昇華されています。レトロで可愛らしいデザインを求めつつ、実用性も重視したいという方にはぴったりな一台ですね。
ただ、内装に関してはVWらしいシンプルでベーシックな作り。無駄のないデザインは心地よいですが、レトロポップの要素をもう少し感じたかったと思うこともあるかもしれません。インテリアや遊び心を加えたかったという方はカスタムや小物で補う楽しみもあります。
まとめ:ビートルのDNAは消えない
ビートルは市場の変化やフォルクスワーゲンの戦略転換により、生産は終了しまた。しかし、そのデザインやコンセプトは今でも多くのファンに愛されています。
復活は未定ですが、今後EVの流れの中で、新たな形で登場する可能性も期待できます。
ただし、従来の形のままではなく、EVプラットフォームを採用した「次世代のビートル」として生まれ変わることになるでしょう。

